DJ.ルメイヒュー〜男は黙って野球しな〜MLB「この人を見よ」(9)

Embed from Getty Images

私は寡黙な野球選手が好きだ。職人肌でコツコツ自分の仕事をこなす、そんな選手だ。野球については熟練しているが、SNSはめっきりダメ。愛国的で、保守的で、もしかしたら相手を傷つけない程度に差別的……。悪くないね。
そんなこと言っていたら、時代遅れだと誰かに批判されてしまうかもしれない。「今は、ツイッターやユーチューブをやって誰もが表現者になる時代だよ、きみ」。NewsPicksのプロピッカー(ああ、私が一番嫌いな人種)なんかにそう言われるかもしれない。「人種差別を肯定するんですか?グローバルスタンダードに反します!」大学院卒の民主党支持者(ああ、私が一番話したくない人種)は蔑む目で私を見下すだろう。ほっといてくれ。

そんな私は、ヤンキースに所属するDJ.ルメイヒューがお気に入りだ。理由は簡単。ルメイヒューが寡黙な人間で、とにかくクールだからだ。
ヤンキースファン向けのカタログに、ルメイヒューのインタビューが掲載されていたが、それを読むと彼がどれだけ口下手な選手かわかる。

ーーー最近、読んだものは?

ルメイヒュー「ん?最近?スマホかな」

ーーーいま、よく聞いている歌手は?

ルメイヒュー「テイラー・スウィフト」

ーーーお気に入りの曲は?

ルメイヒュー「知らない。最近の曲は好きじゃないんだ」

確かにインタビュアー泣かせである。でも、どうかルメイヒューのことを嫌いにならないでほしい。彼はインタビューの最後にこう言う。「ごめんね。僕はこういったものに向いてない、最悪の人間なんだよ」。シャイなだけで、実はいい奴なのである。

また、こんなこともあった。昨シーズンの夏、ヤンキースがエンゼルスと戦うためにアメリカを横断している機内のなかで、チームの若き主砲、グレイバー・トーレスが一枚の写真を撮った。それがインスタグラムにアップされている。


ルメイヒューを見つけることができるだろうか。ちょっと難しい。クイズ番組で出題されたら、いい問題になるくらい難しい。
アーロン・ジャッジ(写真右のシャツの襟にサングラスをかけた歯の白い男)の後ろに、ちょこっと頭が見えるはずだ。後ろ姿で帽子をかぶっている。そう、それがルメイヒューだ。真面目な奴なんだ、おそらく対戦相手のビデオでも見ているんだろう。

あまりに寡黙だったからというわけでもないだろうが、2018年オフのFA市場においてルメイヒューは目立たない存在だった。USAトゥデイのボブ・ナイチンゲール記者に言わせるとルメイヒューは、まさに「見落とされたフリーエージェント」だった。
ルメイヒューが目立たなかったのには訳がある。2018年のシーズンオフといえば、ほとんどのメディアが二人のFAの行方に注目していたからだ。ブライス・ハーパーとマニー・マチャドである。結局、マチャドはパドレスと10年3億ドル(約332億円)、ハーパーはフィリーズとFA史上最高額の13年3億3000万ドル(約368億円)という大型契約を結んだ。一方、ルメイヒューはヤンキースと2年2400万ドル(約26億円)という、ニュースにならそうな契約に落ち着いた。ただ、そのシーズンが終わったあと、多くのフロントがルメイヒューを軽視していたことを後悔したはずだ。その3人のなかで、一番活躍したのはルメイヒューだった。結局、MLBでも野球が上手い奴より目立つ人間の方が金をもらえるのだ、残念ながら。

2019年、ヤンキースはルメイヒューの活躍もあって、7年ぶりにア・リーグ東地区を制した。そして迎えたアストロズとのリーグ優勝シリーズ第6戦。場所はアストロズの本拠地、ミニッツメイドパーク。ヤンキースは2勝3敗で、この試合に負ければシーズンが終わる。9回表、2対4のビハインド。まさに絶体絶命の場面だった。1アウト1塁の場面で打席にルメイヒューが入った。
問題。この場面で彼は何をやったと思う?
そんなに難しいことじゃない。いつも彼がやってきたことをアストロズ陣営にやらせたのだ。そう、ミニッツメイドパークに駆けつけたファンたちを黙らせてやったのだ。ルメイヒューが放った放物線は、ライトスタンドへ吸い込まれていった。
結局、ヤンキースはこのホームランで同点に追いついたものの、試合には敗れてしまう。「すごく残念だよ」。試合後、ルメイヒューは言葉少なにインタビューに答えた。また、こんなことも言っている。「変な試合だったよ。負けたのがおかしいくらい」。ちょっとMLBを知っている人間なら、この意味を深読みしてしまうだろう。まあ、大リーグ機構が調査を終えた今、その試合で何があったかは神のみぞ知るといったところだろう、またアストロズからの内部告発がない限り。

ルメイヒューはこんな奴だ。本当にクールな人間である。
そう、言い忘れていたが、ルメイヒューはまったく差別主義者ではない。だから私のことは嫌いでも、彼のことは嫌いにならないでください。そして、現代人としてルメイヒューはツイッターだってやっている、年に1回つぶやく程度だけど。寡黙な奴だね、ほんと。

コメント

タイトルとURLをコピーしました